アジアのマザーテレサ
亞洲的德雷莎姆姆
台湾の台東に、足取りはおぼつかないものの、いつも笑顔を絶やさず元気に野菜 を売る小柄なおばあちゃんがいます。一見すると普通の「働き者の八百屋のおばあ ちゃん」ですが、実は有名な女性慈善家なのです。
足取り あしとり腳步;步伐。 おぼつかない不穩當;不可靠。
この方の名前は陳樹菊(shùjú)さん。1950 年生まれで、地元では「陳おばあちゃん」 と親しまれています。陳おばあちゃんは小学 6 年生の時、難産(なんざん)の母親が 貧困のため適切な治療を受けられずに亡くなりました。これをきっかけに学校を中 退し、父親と野菜売りの仕事を始めます。
~をきっかけに 機緣;緣故;契機
数年後、弟が重病を患い、長期の治療で生活が苦しくなりました。学校の先生の尽 力で募金活動が行われましたが、弟は亡くなってしまいます。この経験から、陳お ばあちゃんは将来貧しい人々のために何かしたいと決心します。
重病を患う じゅうびょうをわずらう 患重病。
2005 年までの 20 年間で、すでに地域社会への奉仕のため約 3500 万円相当の寄 付を続けていました。
奉仕 ほうし 服務;奉獻;
陳おばあちゃんは決して裕福ではありません。自宅には椅子もなく、蛍光灯一本と 茣蓙(ござ)だけの簡素な暮らしです。それでも自分のことは二の次にし、黙々と人 助けを続けてきました。
裕福 ゆうふく 富裕。茣蓙 ござ 蓆子。二の次 にのつぎ 其次;次要。 人助け ひとだすけ 幫助別人。
陳おばあちゃんの善行(ぜんこう)は次第に広く知られるようになり、学校の教科書 にも掲載。2010 年には、フォーブス誌の「アジアの慈善家」やタイム誌の「世界でも っとも影響力のある 100 人」に選ばれています。
陳おばあちゃんは「56 年間野菜を売って台東の人からお金をもらってきたのだから、 台東の人にお返しするのは当然。老後は住む家と食事さえできれば十分」と語り、 「お金は本来自分のものではなく、あの世には持って行けないのだから、この世に 置いていくのが当然」と付け加えました。